ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]
悲しいお話である。辛いお話である。
だが、決して不幸な話ではなかった。
彼女は、彼女が選択できる唯一の幸福を、確かに選び取っているからだ。
彼女は、理不尽なまでに「母」として生きた。その生命の全てを賭けて。
その生き様は、生命賛歌といってもいい。
「あざとい泣き映画」と言う評論家がいる、それは誤りである。
この作品、多くの人間には、むしろ不快感すら与えるだろう。
セルマの選択は、安易に同情して泣くことすら許さない。
ダンサー・イン・ザ・ダーク【字幕版】 [VHS]
とても悲しく、腹立たしくも感じる映画です。 人の《傲慢さ》《身勝手さ》《弱さ》…出てくる人間の中に潜む“悪”を“これでもか”という程突き付けられ吐き気さえ感じます。 ストーリーは いつか自分と同じく視力を失ってしまう息子の為にひたすら身を粉にして働く彼女。 必死に貯めた彼女の命より大切な手術代がある日突然消えてしまう。 彼女の向かうドア先は彼女を転落の道へと繋げてしまう悲劇の始まり…。 彼女がもっと素直だったらストーリーは全く別のものに変わってた気がします。 ま、それならこの映画は完成しないのですが(笑) 彼女は視力を失うという“弱さ”が彼女自身、周りへの優しさと同時に拒絶(強がり)という形になったのかなと。 彼女は決してストーリーの中で『sorry』とは何事に対しても言わなかった事も彼女自身を又苦しめる結果に。 《息子の為》だけに生きる執念が意外な形でバッドエンドに向かう展開は胸が締め付けられました。 ストーリー中、幾度となくミュージカル調になります。 彼女は余りに苦しく耐え難い“現実”に直面する度に大好きなミュージカルの世界へと自分をいざなってしまう。 そんな彼女の不器用さと純粋さ。世間と上手くやる術を持てなかった悲劇の映画だと感じました。 トリアー監督の映画はいつも人の《醜い部分》をさらけ出し、毎回胸を抉られるような苦しさを感じてますが、やはり観ずにはいられないのは監督の沢山の“メッセージ”が込められているからです。 監督自身も精神的な病気を患っている…。だからこそ見える人と人との間に潜む“闇”がこんなにも表現出来るのではないでしょうか。 彼女の精神世界《ミュージカル》と現実の中の《現実》。 このギャップが逆に悲劇を際だたせている。 2回目は続けては見れない映画ですが、やはり素晴らしい映画だと何度観ても感じてしまいます。
セルマソングス~ミュージック・フロム・ダンサー・イン・ザ・ダーク
ダンサーインザダーク。
ビョーク本人が扮する盲目のセルマを巡る悲劇的なストーリーは
「重くてムリ」という評価と「素晴らしい。大好き」という評価に二分される。
今作、セルマソングスはその映画の内容と直接シンクロする。
つまり、ある人にとっては泣ける。ある人にとっては重い。
といって、ビョークの音楽的な手法の素晴らしさがおざなりになるようなものではなく、
ミュージカル風のきらびやかな音の向こうから立ち現れる不穏な音響、
ノンビートな環境音の向こうから立ち現れるIDM風なブレイクビーツ。
そうしたものがビョークの唯一無二の歌唱の元に統合されている。
個人的には映画の内容が思い出されて胸がいっぱいになっちゃうのも事実だけども、
音楽的にも充分すぎるほど素晴らしい作品なのだ。
ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]
良くも悪くも一度観たら忘れられない映画でしょう。
セルマの決断は正しいのかどうかはわかりませんが、息子の為だけに生きる姿は心を打たれます。
母親が自分の子供を殺してしまうという事件が増えている今、セルマは母親の鏡のような存在に感じます。
本作のミュージカルシーンは、主人公セルマの妄想の中で展開します。
なので、現実世界で突然唄って踊るミュージカルが苦手な人も違和感無く観られるでしょう。
ミュージカルシーンでのセルマはとても魅力的でカワイイです。
そして、その魂の歌声に圧倒されることでしょう。
CINEMA 16:EUROPEAN SHORT FILMS [DVD]
ブニュエルとダリの「アンダルシアの犬」、ゴダールの「男の子の名前はみんなパトリックっていうの」、シュヴァンクマイエルの「ジャバウォッキー」、ラース・フォン・トリアーの映画学校卒業時作品「NOCTURNE」、「リトル・ダンサー」のスティーヴン・ダルドリーの監督デビュー作「Eight」など、ヨーロッパのショート・フィルム16編を収録したオムニバスDVD。作品は面白い物が多く、大満足の1枚なのですが、監督や評論家などによる音声コメンタリーに、日本語字幕がついていないのが残念だったので、星ひとつだけ差し引きました。収録内容は以下です。
1. Juan Solanas (France) "L'Homme Sans Tete" ("The Man Without A Head")
2. Tom & Charles Guard(UK)"Inside Out"
3. Jean-Luc Godard (France)"Charlotte et Veronique, ou Tous les garcons S'appellent Patrick"
4. Peter Mullan (Scotland)"Fridge"
5. Christopher Nolan(UK)"Doodlebug"
6. Jan Svankmajer(UK)"Jabberwocky"
7. Chris Morris (UK)"My Wrongs #8245-8249 & 117"
8. Anders Thomas Jensen (Denmark)"Valgaften (Election Night)"
9. Lars Von Trier (Denmark)"Nocturne"
10. Lynne Ramsay(UK)"Gasman"
11. Stephen Daldry(UK)"Eight"
12. Asif Kapadia(UK)"The Sheep Thief"
13. Toby Macdonald(UK)"Je T’aime John Wayne"
14. Peter Naylor, Carl Hunter(UK)"Unloveable"
15. Mathieu Kassovitz(FR)"Fierrot Le Pou"
16. Luis Bunuel and Salvador Dali(FRA)"Un Chien Andalou"
"L’Homme Sans Tete" は、作品も監督も、はじめて知ったのですが、これがすごくいい作品で、収録作品の中でも特に気に入りました。頭の無い男が、好意を寄せる女性とのデートの為に、頭を買いに行き・・・という、ファンタジックなお話で、映像は、美しく印象的で、目を奪われるもので、ストーリーも良く出来ており、監督の非凡な才気を感じます。2003年のカンヌ映画祭のジュエリー賞やフランスのセザール賞など、数多くの賞を取った作品だそうです。
狂気をユーモラスに描いている、Chris Morris の"My Wrongs #8245-8249 & 117" も、気に入った一本。英国アカデミー賞受賞作品だそうです。