緑友利恵映画『白夜行』コメント＆予告緑友利恵モバイル

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原作は読みました。東野圭吾の最高傑作との評もありますが、たしかに謎解きもさることながら心の闇を描く読み応えのある９００ページ近い長編でした。
映画化にあたっては、その分量も問題だけれど、小説の構成が大きなハードルだったはず。原作は主人公の心理描写を極力排除し、主人公の周辺を濃密に描くことによって、徐々に主人公の姿をあぶり出していくところが秀逸でした。最後になって全容があぶり出しのように見えてくるのが凄かった。しかし、映画でそれを徹底的にやってしまえば、主人公達の出番がなくなってしまう。(苦笑)
だから、原作では意図的に削除されていた主人公達の描写が増え、それによって観る側のイメージが固定化してしまう。このあたりの構造的な難しさがあると思いますが、その点はかなり上手くバランスを取れていたかな。メインの隠し味がかなり損なわれてしまったのは残念ですが、仕方がないところでしょう。それでも少々亮司が出過ぎで、そのせいで逆に彼の黒子としての悲しみが表現しきれていないと感じました。
また、ラストに近くなって、謎解きとか、犯人との対決シーンは、確かに観客にきちんと説明しなきゃならないというのはわかるけど、クドく感じました。前半の語り口は滑らかで、すっとストーリーに入っていけます。銀残しを使った映像も含め、時代感みたいなものもきちんと出ていたと思います。

堀北真希はガンバッてました。でも、そもそも彼女はキュートではあるが美人のタイプではないですよね。成人女性としての色香はマダマダ。
船越英一郎も、２時間ドラマの“顔”としての認知度が、迫真の演技であってもどこかライトな感覚を持たせてしまう。彼の演技が不味い訳ではなく、鑑賞者に要らぬ違和感を抱かせるだけ損していますね。
亮司役の高良健吾のナイフのような冷たい演技は印象的でした。特に、ラストの自身の人生に向かって吼えるシーンは素晴らしかったです。

感情移入すれば心が死んでしまうから、登場人物に感情移入することも許されない“禁断の果実”が『白夜行』の本質なのかもしれません。
東野作品の文章から伝わってくる登場人物の思いを、映像で描き出すのは難しいということですかね．．．。

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中原俊監督といえば何と言っても「櫻の園」（つみきみほの方）「１２人の優しい日本人」で知られる。それ以前のにっかつロマンポルノ作品にも名作が多い。しかし最近は長いことスランプかな、という作品が多く、本作もあまり期待せずに観たのだが、どうしてどうして、久々の好編に仕上がっていた。特に主演ふたりの瑞々しさが抜群だ。映画が初めての山下リオは、最初に組んだのが中原組でよかったね。岡田将生はこのところ凄く良くなってきた。次回作も楽しみである。それから太賀。「青い鳥」でのいじめ役が印象深かったのだが、本作では１８０度変わってのガクラン＋メガネ姿。本当は岡田と並べても絵になる男らしいルックスなのに、このあたりが潔い。魔法遣いが公認化されて、霞が関が管掌している、というのも「何じゃそりゃ」的な背景だが、ホンと演出、役者の上手さがそういう考え方を吹っ飛ばした。導入部で「ああ、日本に魔法省があるんだな」とスッと入っていけたからね。冒頭とラストの北海道の「絵」も効いているだろう。中原監督が当初描いていた宮崎あおいバージョンも観たかったけど、癒し系のいい作品です。星４つ。